浅羽通明『右翼と左翼 (幻冬舎新書)』
右翼と左翼 (幻冬舎新書)posted with amazlet at 08.05.19おすすめ度の平均:分かりやすく面白い
わかりやすい入門書
右翼と左翼の源流をさかのぼる
面白い!
在野の知性の力業!!!
ひさしぶりに、字の本を読みました。
なんていうか、日中はそれなりに仕事に追われ、帰宅してから&休日はネット中毒な自分にとって、活字の本っていうのはなかなか接しにくい。ラノベでさえ読むのメンドウ(笑)ってなテイタラクなのです。
それがどうして読もうかという気になったかというと、畏友がブログで著者の新刊を取り上げていて、その新刊も気になったのだけど、通勤とかで読むなら新書だよねーとか思って、ネットで調べてみたらこちらがあったもので。
普段読まないと、活字の本ってなかなか読むのが億劫になるものです。集中力が持たないからです。それなのに、読み始めてビックリ、すごく読みやすい。
いわゆる「ですます体」で書かれているのですが、結論を急がず解説に徹して、しかも途中で説明不足になるところがまったくない。落ち着いた大人〜な文体という印象。
また、プロローグで本書の構成をさらりと述べて、まあ好きなとこから読んでみてよという余裕も好印象につながっています。
で、その構成ですが、この本は終始一貫して以下の疑問を満たすために書かれています。
「『右翼』『左翼』って何ですか?」
「そもそも何を基準に『右』とか『左』とか言うんでしょうか?」
(本書18Pより)
ここから出発して、まず辞書などの定義を総ざらえ&再検討する第一章。
続いて、そもそもの始まりであるフランス革命についての第二章。
さらに続いて19世紀〜20世紀にかけての世界史についての第三章&第四章。
今度は日本の戦前と戦後についての第五章&第六章。
ここらあたりは、そこらの概説書より数倍わかりやすくコンパクトにまとめてあり、文体の親しみやすさともあいまって、本書の商品価値を上げまくっていると言ってよいでしょう。とにかく実用書としての完成度が高い。近現代の世界史ならびに日本史が苦手な受験生諸君にもおすすめです。
学校のクラスで言えば、クラス全体を把握しながらも、クラスの端っこで友達もつくれないけど絵さえ描けてればシアワセ顔のヲタクくんから、乱暴者でみんなの嫌われ者のDQNくんまでへの目配せが、ちゃんとわかっている担任の先生ってカンジです。*1
それから、現代日本についての第七章。ネットでいくつか調べてみると、ここんとこの展開やら分析やらにケチをつけてるヒトもいるようですが、普段から議論系の掲示板&ブログに近づかないオレにはすんなり受け止められました。逆に、そのすんなり感こそ危険なのかもしれませんけどね?*2
ただまあ、本書を批判するには、本書以上のわかりやすい本を書くしかないんじゃないかなあって思いますよ?
で、巻末に置かれたエピローグ。歴史を踏まえた上での「右」「左」ともどもへのダメ出しwww
しかも、先の疑問のその先、思想を求めてしまう「意味」にまで射程を延ばしての結論部分には、そっち系の人には極めて魅力的に見えてしまうはず。
すなわちオレが結論を意訳すると…
損得勘定からの政策判断ぐらいしかできぬ、
「理想」を失くしちゃってる思想に堕ちちゃってる「右」「左」なんて、
ちゃんちゃらおかしいぜwwwwwwww
今後千年を見据え、社会思想をともに 紡 い で み な い か ?
…なるほど、たしかにこれはかなりにアブナイwww とりようによっては新興宗教もかくやというアブナイ匂いがプンプンしますwww そして、そのアブナさゆえにものすごく魅力的なのもまた事実。
ひさびさに、論語と老荘を読み直そうかなと思いました。