『上流社会(原題:High Socciety)』
娘と姪は、日曜に帰っていった。三日間の子守りの時間はかくしてあっけなく終わり、素晴らしくも優雅なひきこもりの時間が戻ってきたのだった。
ビデオデッキにプロジェクターをつなぎ部屋の壁に映し出せば、さながらミニシアター。暗幕を張った部屋で、一人のんびりと昔の映画をながめる。今の自分は収入のない失業者、だが図書館で借りればロハなのだ。もっとも図書館にはVHSしか置いていないが、かまうものか。とにかく見まくろう。
そんな中で気になった映画について書いておく。
【DVD版】
【CD/サントラ盤】ルイ・アームストロング・アンド・ヒズ・バンド ビング・クロスビー フランク・シナトラ セレステ・ホルム ビング・クロスビーとグレイス・ケリー ルイ・アームストロング
東芝EMI (1991/01/25)
【参考URL】
この映画は1956年のMGMミュージカル。カラー作品です。「クール・ビューティ」と言われた女優グレース・ケリーの最後の出演作として有名。
ナニゲな〜く借りてみた映画だったんですが、なんせミュージカルですからね、映画が始まってすぐに歌なんですよ。あれれ、何か聴いたことあるようなリズムだな? と思ったら、カリプソなんですよね。映し出しているのは舞台となっているロード・アイランドの空からの映像、走っているバス、そのバスの中のバンドマンたち。陽気に歌うサッチモことルイ・アームストロング。曲名は「ハイ・ソサエティ・カリプソ」。
1956年というのは「デェ〜オ♪」でおなじみの曲「バナナ・ボート」をハリー・ベラフォンテが流行らせた年なんですね。ベラフォンテのアルバム『Calypso』は同じ年にミリオンセラーになってるそうです。つまり、当時流行の最先端だったワケなんですよ、カリプソは*1。だから、この映画でも取り上げられているのではないかと思うんすよね〜。
音楽はコール・ポーターが担当ですので、このカリプソを取り入れたのもおそらく彼なんでしょう。他の曲も素晴らしいです。回想シーンでボート上で歌われるバラード「トゥルー・ラヴ」や、クロスビー&シナトラが軽快に歌う「ほんとうですか?」、メンバー紹介を交えたライブ映像にもなっている「これがジャズです」などなど。
もともと『フィラデルフィア物語』というブロードウェイ作品が映画化され(1940年)、それをミュージカルとして再映画化したという、少々複雑な過程があるそうです。ロングアイランドのニューポートジャズフェスティバルにひっかけ舞台&人物設定を変更、しかしあらすじ自体は変わらず、大富豪のわがまま娘の再婚話に、前夫とゴシップ雑誌の記者が絡む、といったストーリー。残念ながら映画自体はとりたててイイ出来とは言えません。でも音楽は本当に素晴らしい。
あとね、グレース・ケリーの美しさや、衣装の華やかさも見ものです。俳優たちの着るラペルの細い、でもダボッとしたスーツが、いかにも50年代アメリカってカンジでイイです。ゴシップ記者役のフランク・シナトラや再婚相手役の着こなしがカッコイイっす。三つボタン中一つ掛けなんだよねー。んで細いネクタイと。あ、ビング・クロスビー扮するデクスターはエンブレム付のブレザーにグレーのパンツというトラッドな装いですから、上記スタイルとは異なります。これはサッチモたちバンドメンも似たようなカッコをしていて、いわばジャズ風のスタイルということなんでしょうかね。結婚式前夜のパーティで着てるグレース・ケリーのドレスも素敵ですねー。
とまあ、とってつけたようにホメていますが、エエ、とってつけているだけですからどうぞお気になさらずにwwwww
あ、↓これもとってつけておきますね♪
*1:アメリカでのカリプソ受容については、40年代にアメリカで活躍したトリニ出身のカリプソ歌手たち、すなわちデューク・オブ・アイアン、マクベス・ザ・グレイト、ロード・インヴェイダー、サー・ランスロットらのカリプソ紹介が、ハリー・ベラフォンテ大ヒットの下地をつくったのではないか?という指摘があります。ソース:『Calyoso of Trinidad & Mento of Jamaica』。