アポストロフィーS

ワンワン!ワンワンワン!

『上流社会(原題:High Socciety)』

 娘と姪は、日曜に帰っていった。三日間の子守りの時間はかくしてあっけなく終わり、素晴らしくも優雅なひきこもりの時間が戻ってきたのだった。
 ビデオデッキにプロジェクターをつなぎ部屋の壁に映し出せば、さながらミニシアター。暗幕を張った部屋で、一人のんびりと昔の映画をながめる。今の自分は収入のない失業者、だが図書館で借りればロハなのだ。もっとも図書館にはVHSしか置いていないが、かまうものか。とにかく見まくろう。
 そんな中で気になった映画について書いておく。

上流社会 特別版



【VHS版】

上流社会
上流社会
posted with amazlet on 06.07.25
ワーナー・ホーム・ビデオ (1992/08/21)


【DVD版】
上流社会 特別版
上流社会 特別版
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ワーナー・ホーム・ビデオ (2006/09/08)


【CD/サントラ盤】

【参考URL】

 この映画は1956年のMGMミュージカル。カラー作品です。「クール・ビューティ」と言われた女優グレース・ケリーの最後の出演作として有名。
 ナニゲな〜く借りてみた映画だったんですが、なんせミュージカルですからね、映画が始まってすぐに歌なんですよ。あれれ、何か聴いたことあるようなリズムだな? と思ったら、カリプソなんですよね。映し出しているのは舞台となっているロード・アイランドの空からの映像、走っているバス、そのバスの中のバンドマンたち。陽気に歌うサッチモことルイ・アームストロング。曲名は「ハイ・ソサエティカリプソ」。
 1956年というのは「デェ〜オ♪」でおなじみの曲「バナナ・ボート」をハリー・ベラフォンテが流行らせた年なんですね。ベラフォンテのアルバム『Calypso』は同じ年にミリオンセラーになってるそうです。つまり、当時流行の最先端だったワケなんですよ、カリプソ*1。だから、この映画でも取り上げられているのではないかと思うんすよね〜。
 音楽はコール・ポーターが担当ですので、このカリプソを取り入れたのもおそらく彼なんでしょう。他の曲も素晴らしいです。回想シーンでボート上で歌われるバラード「トゥルー・ラヴ」や、クロスビー&シナトラが軽快に歌う「ほんとうですか?」、メンバー紹介を交えたライブ映像にもなっている「これがジャズです」などなど。
 もともと『フィラデルフィア物語』というブロードウェイ作品が映画化され(1940年)、それをミュージカルとして再映画化したという、少々複雑な過程があるそうです。ロングアイランドのニューポートジャズフェスティバルにひっかけ舞台&人物設定を変更、しかしあらすじ自体は変わらず、大富豪のわがまま娘の再婚話に、前夫とゴシップ雑誌の記者が絡む、といったストーリー。残念ながら映画自体はとりたててイイ出来とは言えません。でも音楽は本当に素晴らしい。
 あとね、グレース・ケリーの美しさや、衣装の華やかさも見ものです。俳優たちの着るラペルの細い、でもダボッとしたスーツが、いかにも50年代アメリカってカンジでイイです。ゴシップ記者役のフランク・シナトラや再婚相手役の着こなしがカッコイイっす。三つボタン中一つ掛けなんだよねー。んで細いネクタイと。あ、ビング・クロスビー扮するデクスターはエンブレム付のブレザーにグレーのパンツというトラッドな装いですから、上記スタイルとは異なります。これはサッチモたちバンドメンも似たようなカッコをしていて、いわばジャズ風のスタイルということなんでしょうかね。結婚式前夜のパーティで着てるグレース・ケリーのドレスも素敵ですねー。
 とまあ、とってつけたようにホメていますが、エエ、とってつけているだけですからどうぞお気になさらずにwwwww


 あ、↓これもとってつけておきますね♪

Calypso
Calypso
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Harry Belafonte
RCA (1992/04/28)
売り上げランキング: 86,135

*1:アメリカでのカリプソ受容については、40年代にアメリカで活躍したトリニ出身のカリプソ歌手たち、すなわちデューク・オブ・アイアン、マクベス・ザ・グレイト、ロード・インヴェイダー、サー・ランスロットらのカリプソ紹介が、ハリー・ベラフォンテ大ヒットの下地をつくったのではないか?という指摘があります。ソース:『Calyoso of Trinidad & Mento of Jamaica』。