落ち込み気分の時に
微妙に落ち込み気味です。特に何かあったワケではないのだけれど。こんな時に読む定番っていうのは決まっていまして、今日はそれを紹介しましょう。
- 作者: 冬野さほ
- 出版社/メーカー: 集英社クリエイティブ
- 発売日: 1990/12
- メディア: 新書
- クリック: 3回
- この商品を含むブログ (5件) を見る
そのアイデアっていうのは、たとえば、セリフ。微妙にレイアウトをズラすことで、セリフのイントネーションまで読み手に想像させる効果を仕掛けてあるんです。他にも見開きを効果的に使ったコマ割とか、ワンシーンを細かくコマ割りして描写するだとか、重いテーマを扱ってるのに引きのコマでコミカルなタッチになるとか。
「つまんないなー、なんかおもしろいことないかなー」って、退屈ゆえに万引きをして気を紛らわせ、そのこと以外のこと、たとえばチコクせず学校に行くだとか、試験のために勉強するだとか、将来のことを考えるだとか、そういったことから逃げて、考えないようにしている女の子が主人公なんだけど、そのコの、なんていうか自省的というか、内省的というか、最終的には自己嫌悪になっちゃうみたいな重いテーマを扱ってるの。それにもかかわらずすっごく読みやすいのは、主人公キャラのふわふわ感と、先に挙げた効果的なアイデアの成果ゆえでしょう。
平凡なコの平凡ゆえのなんにもなさ、みたいに描いてあって、つまりヤンキー度っちゅうか、ドキュン度ゼロで描かれてる点がグウ。こうやって描いちゃうと、みんな逃げられないものね。ヤンキーだから違うじゃん、みたいに言わせないっちゅうか。まあその意味では紡木たく『ホットロード』を意識してんのかもね、この作品。
万引きがバレそうになってあわてて逃げて、こけてすりむいて、でもなんとか逃げられて、ふるえながら一人夕日を見て、ふるえをごまかすかのように「キレイだなあー」って言う場面があるんだけど、まるでそのふるえが伝わってくるように描いてあるんすよねー。絵がウマイってだけじゃなく、これは演出&コマ割りがウマイ。
で、これを落ち込んだ時に読むと、またしみるっすよ〜。胸のモヤ〜ってした感じっつーのは、他人が受けとめてくれるとかなりラクになるよなーてなことを、ラスト読みながら思うワケで。んで、好きなヒトのこと思い浮かべてよけい切なくなっちゃったりしてね〜(´Д⊂グスン*1
- 作者: あきの香奈
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 1990/10
- メディア: 新書
- クリック: 1回
- この商品を含むブログ (1件) を見る
インディーズバンドのボーカルだった女の子が、デビュー目前にして喉を手術して歌えなくなっちゃった。←このあたりはサラっと流して、ちっとも描かず。その後のたんたんとした日常のみを描いてあるんだけど、とにかくダメなカンジに打ちのめされる主人公が、それでもなんとか自分なりに元気になる方法をさがす、という話らしい話もない話。なのに、なんだろうこれ、すっごくイイ!*2
ばったり出会った昔のバンド仲間を見て、1曲だけ歌えばスッキリするかも、と懐かしい気分でスタジオに向かうと、そのバンド仲間たちは何かを真剣に話してる。そこに入っていけない気分になっちゃって、入れないとことか。
ひとり旅行に行こうとして電車の切符まで用意するんだけど、急にバイトのシフト交替を頼まれて、イヤとは言えず旅行をあきらめる。で、切符を破いてしまって、母親から「あ〜あ、もう払い戻ししてもらえないじゃないの〜」と言われちゃうとことか。
とにかく、この主人公のイイところは自分のダメさをとことんわかってて、それを他人に相談しないし、他人をアテにしないってことなのね。そして、それが欠点でもあるんだけど。とにかく一人で「どうすれば元気になるかなあー」って考えてる。でも、とにかく裏目に出てしまう。
救いといえば、主人公のドジなコミカルさなのね。その「あたしらしさ」にようやくふっきれるかなっていう余韻を残して終わるラストが大好き。他人に頼らず、自分を好きになるってホントにムツカシイ。ムツカシイけど、なんとかできるかもって、いつもこれ読んで思うんすよ〜。やっぱり好きなヒトに迷惑かけないためにも、まずは自分を好きになろうかな〜ってね。*3