アポストロフィーS

ワンワン!ワンワンワン!

メロドラマ☆ビジネス──『NANA』

 さて、お次は『NANA』ですな。このマンガは月刊Cookieに連載されています。90年代後半に明らかにりぼんの作風から離れてしまった矢沢あいのために創刊された雑誌です。ちょうどファッション雑誌zipperでの連載もありましたので、この時期に矢沢あいはりぼん専属からフリーになったのでしょう。おそらくは大人気作家の引止め工作としての創刊、という側面もあったと思います<月刊Cookie
 『天使なんかじゃない』あたりからブレイクした矢沢あいですが、アニメ化によるメディアミックス作『ご近所物語』で人気を不動のものにし、そのシリーズ作として『パラダイス・キス』をzipperで連載。洋楽的にはメロコア・国内的にはジュディマリを聴いていたようなファッション系の専門学校生のハートをわしづかみ状態にして、その人気の基礎を固めます。
 そんな矢沢が満を持して放ったのがこの『NANA』であります。女の子二人の友情を軸にしたメロドラマてんこ盛り、演出としては紡木たくホットロード』をさらに発展させたモノローグ使い&りぼんの伝統芸としての「キャラがセリフで全部説明してくれる」理解しやすいストーリー運びにより、向かうところ敵なし状態のスゴイ出来です。こりゃ人気出るよなと思わせるものです。加えて今回の人気の秘密はメインターゲットの年齢層を絞り込んでいないメガミックス展開にあると思います。
 雑誌としての月刊Cookieはりぼんのお姉さん雑誌という位置づけではあるんですけど、『NANA』と、時々描くいくえみ綾を除いてはほとんどヒット作/注目作に恵まれず、しかもりぼん系の作家さんとマーガレット系の作家さんがかぶっていて、続けて読むと違和感ありすぎというようなチグハグさを抱えています。みんな『NANA』目当てのみで買ってるんだから、他のマンガはおまけ以下だったりするわけです。
 しかし『NANA』の連載に関してはそれが良い方向に出ていて、いわゆるヤングレディース系(ヤングYOU、フィールヤング、KISSなど)の読者から、別冊御三家(別マ、別フレ別コミ)を読む層にまで届いている。さらに言えばマンガからしりぞいていた層までも社会現象化のおかげで取り込むことに成功。ほとんど無敵状態に見えますよね?
 取り込めていないのはいわゆる「おたく」層であります。つまり、少女マンガに関して言えば白泉社系のマンガを好み、BL系にまで手を出していて、ネタ本として週刊少年ジャンプを毎週買ってるようなコは、『NANA』はまず読んでいないと考えられます。しかし、こういったいわゆる「腐女子」は、もはや特別な存在とは言えません。特別な存在とは言えないコを読者として取り込めない世界として成り立っている、それが『NANA』の世界だと思うのです。
 オモシロイのは矢沢なき後のりぼんで人気となったのが種村有菜こと通称ありなっちだということでしょう。このおたく系作風の新時代を築いた作家の影響下にある子どもたちは、「腐女子」同様『NANA』を支持しないと思われます。
 というワケで、これ以上の読者拡大はナイので、あとは巻数をできるだけ長くして、今読んでる一般ピープル(と、どうやら思い込んでいるらしい層)をじらしてじらしてじらしまくると言った手法を当分続けるビジネスでしょうね。
 以上はほとんど何の資料も見ずに書きなぐりました…乱文多謝。