アポストロフィーS

ワンワン!ワンワンワン!

川原由美子『観用少女(プランツ・ドール) (1) (眠れぬ夜の奇妙な話コミックス)』

 今日は会社の友達に借りた本について書きます。川原由美子先生です。80年代の小学館系少女マンガ誌の第一線で活躍なさっておられた方ですね。ぼくも子どもの頃にちゃお誌連載の『ソルジャー・ボーイ』や単行本で『前略ミルクハウス』などをおもしろく読んだ記憶があります。今も現役バリバリ、実力のある方です。
 作品としては、オムニバス形式の短編集で、支那風の猟奇的小話の現代版アレンジ、といったところでしょうか? 残酷味は全く感じられないので、口当たりの良い少女マンガといった趣なんですが…。
 【注意!】以下ネタバレになる内容を含みます、ご容赦。

 さっき帰りの電車で1話目を読みながら、実は、かなり生理的にうけつけなかったんですよね…。タイトルは「食卓のミルク」。あらすじはこうです──しがない主人公が、香港とおぼしき街の一角で、貴族相手に売られている「観用少女(プランツ・ドール)」に出合う。店の主人の巧みなセールストークで、信じられないほど美しい容姿で、ミルクと砂糖菓子と愛情を栄養として育つというその「天使(エンジェル)」を育てることになったが…。
 なんていうかね。まず、ものすごく「性」的な話なのに、ちっとも「性」が取り扱われない不気味さがねー。なんか隠してる気がするんですよ。その隠し方の気持ち悪さを感じてしまったです。これが一点ね。
 作品としては現代サラリーマンの寓話として仕上げているんだろうけども、主人公に代表される現代サラリーマン男子は、ようするにキレイキレイなオンナコドモのための奴隷でええやんって言われてるワケでしょう? これ読んで怒る気になれないとしたら、ちょっと男子として情けなくないか?とも思うんすけどねー。しかもオンナコドモはキレイキレイな位置におさまってりゃイイじゃんって言ってるワケで、これに対してフェミニストが怒ってくれないとちょっと困るな。これが二点目。
 あとはラストのオチの陳腐さ! うへーって思ったですよ。なんだろこの後味の悪いカンジ。纏足や畸形といった猟奇が堂々と肯定され、しかもそこに後ろめたさを微塵も感じていないかような、あのオチ! これが一番許せないかもしれない。たとえば寺山修二のお芝居が「見世物の復権」を標榜する時の、あの公序良俗をノックアウトするかのごときワクワク感や見ちゃイケナイものを見てしまう罪悪感などとは比べようもない。
 いくえみ綾の『バラ色の明日 (6) (マーガレットコミックス)』収録の「不思議な男の子」がしきりに思い出される。養女と愛人関係のパパが登場する話。このパパの気持ち悪さそのものを思いっきり隠蔽してさらに気味悪くなり、しかもそのことへの自覚のなさがさらに気味悪さに拍車をかけてるって状態なのが、この川原作品だと思った…ってちょっと貶しすぎっすね、ファンの方々、どうもすみません。
 読んでみると、この1話目以降のお話は楽しく読めました。↑に書いたことをカッコにくくればってことですけどね。カッコにくくれないからこうやって日記に書き殴ってしまっているワケですけどね。いやはや、自分もまだまだ若いな、なんつって(笑)