加藤秀俊『見世物からテレビへ (岩波新書 青版)』
- 作者: 加藤秀俊
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1965/08/20
- メディア: 新書
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見世物についての「娯楽」と「教養(あるいは教育)」についての考察で、祭事とセットであることから100%の面白さではなく1%でも「道徳」的要素を求める日本人の深層心理にせまる第一章。たしかに自分にも覚えがありますよー、はじめて山本直樹『ありがとう 1 父帰る (ビッグコミックス)』を読んだ時のホントにイヤなカンジとか。アレ? ちょっと違いますかそうですか。
演歌の項目では、いわゆるド演歌系の系譜については全く触れられず、もっぱら川上音二郎(オッペケペー節)−添田唖蝉坊(あぜんぼう、と読む。奈良丸くずし他)−石田一松(のんき節)−三木トリロー(冗談音楽)といったそうそうたる近代日本の音楽史の一断面が語られる。これはその後、クレージーキャッツを経て大滝詠一へと受け継がれるワケだが、ま、このあたりは各研究サイトがあるでしょうから、興味のある方はググってみてください。ただねえ、このあたりは演歌っちゅうとこから連想するもんと違ってくるからなあー。それでも時代劇のニヒルなヒーロー像から入ってアナキズム考察につなげるあたりは、ま、インテリ芸っすね。
で、そゆのに混じって狸御殿の章まである! 大好きなんですよ狸御殿モノ。もちろん元祖である『歌ふ狸御殿』も素晴らしいんですけど、それよりも美空ひばりが主演の『七変化狸御殿』と『歌祭り満月狸合戦』がもう最高! どちらも昭和29年、まだまだ戦後の暗さが残っていた時代であり、初代『ゴジラ』の封切られた年でもあります。つまり高度成長以前ってとこが重要です。
さらにさらに、ホントに感心したのは風鈴・鯉のぼりの章です。鯉のぼりの発達をめぐる推理をしているんですが、江戸時代に鎖国によって国に閉じ込められた海洋の民が発達させたっていうんですよね。これにはブッ飛びました。いや、興味ある方はぜひココだけでも読んでみてください。すっごくオモシロイっす。