アポストロフィーS

ワンワン!ワンワンワン!

ちょっといくえみについて書いてみようかな

 「いくえみ綾」のキーワードで訪れてもらってる方が多いようだ。昨日のリンク元で割とイイ数になってる(といってもま、微々たるものですけどね?)。新刊は出ていないし、きっと連載の影響なんだろうな。別マ連載の『かの人や月』か、zipper連載の『カズン』か。某スレでは前者でエライ盛り上がりだったが、さて。
 でも、こやってネットでさぐりを入れるとわりと多くの人に支持されてる作家だという実感がもてて助かるです…。リアルでつきあいのある面々に、いくえみファン少ないんだよね……つーかぶっちゃけいないんだよね……ってどういうことなのよッ!? 泣きたいです(´Д⊂グスン もっとディープに作品論とかが語れる友人がほしいよう〜。
 といいつつですね。いくえみファンの傾向と対策も、ちょっと考えてしまうワケですよ。出合う前から構えてしまうっつーか。なんていうの? ホラ、自分がハードないくえみ信者な側面もあるから、他の人も同様に偏ってる部分ってのがあるんだろーなあーって思ってしまうワケ。まあ、偏ってない人間なんか、何の魅力も感じないんだけどね〜、少なくともぼくは。某スレでも、いろんな人がいるもんね。
 でまあ、踏み絵になる作品として「いちごの生活」、「あなたにききたい」、極めつけが「Fight!(バラ色3話)」あたりですかね、やっぱ。「いちごの生活」は、別れ話を持ち出す彼に、新しい彼女といっしょに彼をシェアすることをもちかける公認フタマタ状態出現!なスゴイ話。「あなたにききたい」は子どもっぽい主人公につきつけられた人間のダークサイドのエグさ!な話で、ダメな人はひたすら読後感悪そう。「Fight!(バラ色3話)」はボーリキ男に惚れちゃった営業スマイル張り付き女の話で、短篇オムニバス『バラ色の明日』をいくえみ代表作!と言う人でも、この作品だけはちょっとクビをひねってしまうという…、つまり、単なるDQNじゃねえかよ!って。
 ま、ぼくは全部好きなんですけどね〜、ええ。信者っつーのはそういうもんですな。でも最近作ではやっぱり「ブローチ」にやられっぱなし……って話は前にもしましたね。10年つきって2年同棲したカップルが、だんだんすれ違いが多くなって、二人関係を保つための「発展的解消」のために別々に暮らすことに。二人がつきあうきっかけとなった猫がいなくなって…。
 結局別々に暮らして距離ができて、二人の間に横たわるどうにも超えがたい溝みたいなものに、逆に冷静に気づいてしまうんだよね。それはもう、他の人には説明できないような積み重ねた日々によるもので、それを動かすには今までの日々全部を否定しなきゃならないみたいな。だから、わかりやすい物語にすがろうとする。
 ラスト近くで彼の部屋を、主人公がそうじするシーンがある。そうじ、といいつつ「他の女のニオイ」をさがそうと必死なのだな。何も目を血走らせて、他に女がいるから私に興味をなくしたに違いない!とかっていう嫉妬に狂った女のノリでは全然ない。「女が敵なら戦える」から必死でさがすのだ。つまり、そういう「劇的」な展開に逃げたいのだ、すがりたいのだ。でも、そんなものはどこにもないのだった。
 世の中に芸能ニュースのみならず、ありふれた痴話ゲンカなんて、そこいらじゅうにある。でもそれも、実は語られている内容は、しょせん流通しやすく加工された上っ面でしかなく、わかりやすい「物語」にすぎない。真実なんて、しょせん当事者にしかわからないし、実は当事者にすらわからない場合だってあるのだな。そういうことを描いてしまったマンガがこの作品。某スレでも指摘があるように、BUMP OF CHICKENの「K」という曲をかなり意識していると思われます。できたらこの曲を聴いてから読んでほしいっすね。