アポストロフィーS

ワンワン!ワンワンワン!

羽柴麻央『私日和 2 (マーガレットコミックス)』

 羽柴麻央さんの『私日和 2 (マーガレットコミックス)』を読んだら、予想以上に素晴らしかった。2巻なんだけど、短編集なんで別に続きものではない。でもひょっとしたらいくえみの『潔く柔く』のようにだんだん関連していくかもしれないなあ。

 

私日和 2 (マーガレットコミックス)
羽柴 麻央
集英社
おすすめ度の平均: 5.0
5 待ってました!

 この人の単行本を買うようになったのは2004年に出た『マブタノヒト (マーガレットコミックス)』からなんだけど、それに収録の「金魚姫」という短編が、もろに『ポケットの中の君 (マーガレットコミックス (2172))』の頃の冬野さほの絵柄と手法を丸パクリしてたのが気に入ったのです。フリッパーズギターに対してのブリッジ/カジヒデキ的なカンジみたいな?
 ブリッジもカジくんもキモチワルイと思ってほとんど聴いていないオレなんですけど、羽柴さんの短編はおもしろかった。絵柄と手法を丸パクリしてるのに、ちっとも冬野さほ的センスの洗練がないところがすごくよかったのよ。
 具体的には『ポケットの中の君』収録の「She Loves You」っていう短編を元ネタにしてて、前半とかはほぼまんま、後半を強引にハッピーエンドに改変してある。金魚を小道具として使ってて、そこんとこが90年代半ばからのあの時代、渋谷系サブカル騒ぎが収まってaikoあたりがFMでヘビロテになってもう一人のTKこと小林武史のわかりやすいサウンドプロデュースとどれも似たような映像美(笑)の岩井俊二が妙に持ち上げられてた頃の感性を、いまさら踏襲したかのようなセンスがよかったのよ。そのいまさら感がね。いまさら感なんだよ!(大事なことなので2回言いました)
 さらに言えば、『マブタノヒト』表題作は地味ゆえにすれ違う男女を描く小道具にニルヴァーナなんですよ。2004年発表の少女マンガ短編にニルヴァーナ! コメディタッチにしてあるけど、地味な男女っていうのはこの人のモチーフなんだと思う。


 今回の単行本『私日和?』、収録作の「ありあけの月とダンス」「ブルーブルーバード」、これはそれぞれつながっている物語で、世間ズレしてしまって表情に乏しい(=感情表現に乏しい)女の子の話。綾波長門や天使ちゃんが好きな人はきっとハマると思うのでオススメなのです。
 特に真夜中に庭でハーモニカにあわせてバレエを踊る場面、それから初夏の海辺で同じくハーモニカにあわせてバレエを踊る場面の美しさ。
 しかしずいぶん洗練されたのに、ちゃんとどこかダサさがあるのがいい。それこそがいまさら感なんですよ、この人の場合。念のために言っておきますけど、けなしてるんじゃないんですよ。それこそがハマる人はハマるツボなんですよ。