アポストロフィーS

ワンワン!ワンワンワン!

『サマーウォーズ』感想



 【 W A R N I N G !】
 ネタバレを含むので、未見の方は読まないようにお願いします。



 見た感想としては、面白かった! けどね、けどね…。うーんうーん…。


 まず、何といってもウソ臭いなあーと思ったのは、ナツキがコイコイでラブマに負けそうになる場面で、世界中の人がアカウント協力を申し入れる場面。甘いなあーって思ってちょっと萎えた。

 世界なんか滅んじゃえ!っていう毒をかかえてる人間だって、相当数いるだろうに、それを全く描かずに終わるとはね。

 まあ、そこまでやったら映画が終わらないっていう、単純な尺の問題だろうからしょうがないのかもしれないけどな!


 あと、言われているほど「家族愛」がテーマの映画じゃないよね。田舎の大家族を描いてはいるけれど、結局南極活躍してるのは孤独げな男の子たちとその成れの果て。

 つまり、ヲタの妄想バリエーションにすぎないんだよなー。

 そもそも「家族愛」だの田舎の大家族だのは、あくまでジブリ客を取り込むための仕掛けにすぎないんすよ。


 カズマ人気なんて理由はカンタン。あれは、理想化されたヲタの少年時代ってことでしょ。だから女の子と間違えるくらいキュートに描いてあるっていう…よく考えればかなりキモイっすよね。

 で、ワビスケは大人になりきれなかった成長失敗の見本と。

 そういう意味では主人公ケンジ含めてこの三人はよく描けてるんじゃないかな。


 それに引き換え、女系が強い家族を描きながら女たちの心情については大雑把に描きすぎ。とくにナツキ、本当に自分勝手なビッチにしか見えない。ラストで告白するのがまるで謎。


 まあ好意的に考えれば、孤独が半端な分ケンジのほうが世間に近かった→ゆえにワビスケを世間に誘導することができた→憧れのワビスケおじさんを導いた人→好き、と見れなくもないかな。


 ケンジの孤独はワビスケの孤独に対して徹底していない、中途半端っすよね。ワビスケはラブマを作り上げるほどの孤独を抱えていた。一方ケンジの孤独は肝心なところでポカミスしてしまうが故に数学オリンピック代表になり損ねる程度のもの。

 でも、だからこそ世間や共同体へのコミットに意欲的にもなれたんだよな、ケンジは。

 無論ワビスケだってコミットはしようとした。しかしその相手は米軍という、日本の世間や共同体からみればどう考えても外部。このあたりの世間知らずとゆーか世間ズレとゆーか、ようするに世間で揉まれたことのない真性ヲタの彼は、その結果がどういうことになるか想定していなかったし、その結果に対して自分が責任を持つべきであるという発想自体がなかった。すごいがゆえのダメヲタっぷりを理想化して描いてるんだよな。


 そこでワビスケに日本的世間を導入させ得たのは、ケンジ&カズマ、ならびに陣内家親族の皆さんとの共闘。ほぼ陣頭指揮というか、原動力となったのはケンジという、陣内家にとってのマレビト。つまり近年増加しているぬるヲタへ希望を与える映画となっとるワケなんすよ、基本的には。

 ほらね? こうやって整理しちゃうと本当にヲタの妄想ストーリー全開でしょ?


 熱い展開がどーのこーの仰ってる方に半分同意しつつ*1、もう半分では所詮ちょっと作りの凝ったデジモン映画じゃん…と思えてしまうのは、オレが曲がった人間だからなんでしょうね、きっと。よかったね、みんな純真で!



 おっと、忘れてた。
 ワビスケ萌えな方はいくえみ綾の名作『バラ色の明日』第9話「who」(マーガレットコミックス版では4〜5巻)を読んでみるといいと思うよ。ちょうど完全版が出てるとこだし。
 あの栄ばあさんみたいのも出てくるからババア属性の人もぜひ!
 こちらの場合、ナツキ的な位置にいる主人公がちゃんと成長するし、何より少女マンガ家であるいくえみ綾がちゃんと男性の孤独を描いちゃってるのがスゴイ。超オススメです!



*1:まあ正直ちょっと泣きそうになったんだけどな!