アポストロフィーS

ワンワン!ワンワンワン!

M.M.ドッジ・作/石井桃子・訳『銀のスケート―ハンス・ブリンカーの物語』

銀のスケート―ハンス・ブリンカーの物語

メアリー・メイプス ドッジ 石井 桃子
岩波書店 (1988/11)



銀のスケート

銀のスケート
posted with 簡単リンクくん at 2006. 4. 1
M.M.ドッジ作 / 石井 桃子訳
岩波書店 (1988.11)
この本は現在お取り扱いできません。

 ハウステンボス旅行の余韻にひたっているのですが、ついついこんな本にまで手を出してしまいました。今から140年ほど前に書かれた、オランダを舞台にした児童文学の名作。ですが、書いたのはアメリカ人のご夫人。同時代の児童文学としては『ふしぎの国のアリス』や『トムソーヤーの冒険』があるそうです(訳者あとがき情報より)。
 オランダ・ヲタだった作者が、オランダ案内として描いた作品で、オランダの歴史や地理はもちろん旅行案内としてもかなり詳しく描きこまれているそうなんですが、訳者としてはあくまでハンス&グレーテルの兄妹の物語にしぼり、少々は削ったようです。ですが、この本を読んで、ハウステンボスがお手本にしたオランダのいろいろなことが、だんだんわかってきたように思います。ちょっと行ってみたい(けどムリ。金ないからwww)
 ハンスとグレーテルの兄妹は、事故で記憶を失い気狂いになってしまった父、その父を看病し続ける母と、ささえあって慎ましく暮らしていた。スケート大会の一等賞の賞品"銀のスケート靴"と父が埋めたはずの千ギルダー、これらの行方をめぐって物語はすすんでいく…(らしい)。まったくすがすがしい、美しい物語でおもしろくってドンドン読んでいるところです。昨日図書館で借りて、今だいたい3分の1ほど読み終えたところ。まだまだ序盤ですね。特に初っ端のグレーテルのほっぺた萌え↓

 グレーテルは、すらっとして、すばしっこい。その目の中には、光がおどっているようだ。そして、ほおは、わたしたちがじっと見ていると、白やもも色の花の咲いている花だんの上を、風がわたるときのように、こいもも色になったり、うすいもも色になったりする。(14-15ページから引用)

 うわーん、かわいいよう!!!!
 ハウステンボスにも同じ名前のお店があるけれど*1、今回の旅行では行かなかったのね。今度行く時には必ず行こう、と心に決めましたwww
 
 
 
 
 

 追記(4/4)。
 つい先ほど読み終わりました。いやースゲエおもしろかった!
 特にハイライトであるスケート大会は、もうドッキドキ! たたみかけるような訳文の名調子のおかげで、鼻息も荒く一気に読み進みましたよ。
 ちょっと、構成について自分用のメモを。

  • 1〜9:冒頭。主要登場人物の紹介、舞台となるオランダの紹介等。もちろん後半のための伏線がいっぱいだ。
  • 10〜30:少年たちのスケート旅行。そのまま19世紀末のオランダ案内となっている。本筋とあんまり関係ない部分。すごく細やかなとこまでオランダの暮らしやら歴史やらを描いている*2。ただし、ここをしっかり読んでキャプテン・ピーターと仲間の少年たちのことをわかっておかないと、スケート大会の描写が薄っぺらく感じられてしまう可能性あるため注意!
  • 31〜45:ハイライトである「43 スケート大会」を含む後半部分。散りばめられた伏線がパチパチとかみ合ってゆくのが気持ち良い!
  • 46:エピローグ。それぞれの未来が語られる。大人になった、ニッコリと笑うグレーテルの笑顔が見えるような、このラストが大好き♪

 全体的に、ちょっと作りすぎなところもあるように思える。伏線がキレイにまとまりすぎていて先が読めちゃったり。それでもエピローグのまとめ方は見事だし、語られない部分の余韻がほどよく利いていて、深みがあるなあーと思ったです。
 特に、物語中もっともDQN度の高いカールの未来! やっぱDQNは…(以下差別発言になりかねないため略) あと、カトリンカ、リシー、ヒルダの3人娘のその後も興味深いっすね。カトリンカなんて、ものすごく現代的な自我を先取りしてるよね〜。古典は偉大だなーと思いました。

*1:http://www.huistenbosch.co.jp/restaurant/shoplist/hansbrinker/index.html

*2:例の「オランダの堤防決壊を指でくい止めたという少年」のエピソードもここに登場する。イギリス人の遠い親戚の男の子に、オランダの男の子が語って聞かせる「伝説の少年」のエピソード。つまり「オランダの堤防決壊を指でくい止めたという少年」は「ハンス・ブリンカー」ではないです…。